福岡高等裁判所 昭和46年(ラ)26号 決定 1971年10月12日
抗告人 慶輔こと古池慶助 外七一名
主文
別紙抗告人目録<省略>番号2ないし72の抗告人七一名の抗告を却下し、抗告人古池慶助(同目録番号1)の抗告を棄却する。
理由
本件抗告の趣旨および理由は別紙記載のとおりである。
まず、抗告人古池慶助を除くその余の抗告人七一名の本件抗告の適否を考えるに、右抗告は古池慶助が代理人あるいは復代理人となつて当裁判所に対し申し立てたものであるが、記録によれば、古池慶助は本件破産事件の届出債権者であつて弁護士の資格をもたないものであることが明らかである。そこで、古池慶助が本件抗告手続につき本件抗告人七一名を代理する資格を有するか否かについては一考を要するところである。
破産法一〇八条によると、破産手続に関しては、破産法に別段の定めがないかぎり、民訴法の規定が準用され、したがつて訴訟代理人の資格に関する民訴法七九条の規定も、破産法に別段の定めがないので破産手続に準用せられるものと解すべきである。
しかるところ、民訴法七九条の定める訴訟代理人の資格は、判決手続とそれに準ずる裁判手続における代理人についてのみ要求される資格であるが、一方破産手続における即時抗告はその性質上右にいわゆる判決手続に準ずる裁判手続というべきものであるから、本件即時抗告事件においては代理について民訴法七九条を適用しなければならない。そうして同条には法令によつて裁判上の行為をすることができる代理人のほかは弁護士でなければ何人も簡易裁判所以外では訴訟代理人となることができないと規定しているから、高等裁判所における本件のような即時抗告事件では、法令上裁判上の行為ができる代理人でもなく、また弁護士でもない前記古池慶助は、同人を除くその余の本件抗告人の代理権を有しないこととなり、同人を代理人としてなされた本件即時抗告は代理権のない者の申立にかかる不適法なものであるといわねばならない。以上によれば、抗告人古池慶助を除くその余の抗告人七一名のなした本件抗告は、不適法でありその欠缺を補正することができないから、却下を免れない。
進んで抗告人古池慶助の本件抗告の当否について審究するに、本件記録を仔細に検討してみても、適法に可決された本件強制和議につき不認可の決定をなすべき事由はないからこれを認可すべきであり、原決定にはこれを取り消すべき違法の点はない。したがつて本件強制和議を認可した原決定は相当であり、抗告人古池慶助の本件抗告は理由がなく、棄却すべきものである。
よつて主文のとおり決定する。
(裁判官 中池利男 松村利智 白川芳澄)
(別紙)
抗告の趣旨
原決定を取消す
昭和四六年二月九日の債権者集会において可決した別紙記載の条件による強制和議は不認可とする
との決定を求める。
抗告の理由
原決定摘示の事実(抗告人らがなした強制和議不認可申立の理由と同一)についての原裁判所の審査は、事実誤認による違法がある。
右事実誤認についての主張は追而追完する。